特別対談 篠浦伸禎 都立駒込病院 脳神経外科部長×鈴木昭平

世界的脳神経外科医が語る「子供の未来を創る教育」
発達障がいは薬では治りません!
母親の愛情が子供の脳神経を発達させる!

篠浦伸禎 都立駒込病院 脳神経外科部長(写真左)

▲篠浦伸禎 都立駒込病院 脳神経外科部長(写真左)

最先端の西洋医学の医師が、なぜ統合医療に関心を持ったのか?

鈴木昭平(以下:鈴木): 本日は、覚醒下手術の世界的権威である篠浦先生にお越し頂きました。お越しいただきありがとうございます。覚醒下手術とは、患者さんの意識のある状態で脳の手術を行うと伺いました。驚きました。

篠浦伸禎(以下:篠浦): はい。脳細胞自体は痛みを感じないので、患者さんと会話をしながら手術を進めます。しゃべっている途中に異変があればすぐに確認ができるのです。

鈴木: 世界的にも著名な篠浦先生に、当協会の活動に関心を持っていただき、大変うれしく思っております。
ところで、篠浦先生は今年1月に「現場から始まる医療革命 統合医療の真実」という書籍を上梓されましたが、最先端医療の第一線で活躍されていらっしゃる先生が、なぜ統合医療(近代西洋医学と相補(補完)・代替療法や伝統医学等とを組み合わせて行う療法)に関心を持たれるようになられたのですか?

篠浦: 私は臨床の最前線で現在も働いており、主に脳腫瘍の治療を専門にしています。近年私は、治療に関しては、長年行ってきた西洋医療の範疇にとどまらず、あらゆるジャンルの治療法、施術の中で病気を予防・改善するのに効果のあるものは「患者さんがよくなればいいじゃないか」という、いわば何でもあり、つまりは統合医療を標榜するスタンスをとっており、ご希望の患者さんにはそれらの方法を積極的にお伝えしています。

鈴木: なるほど!私も全く同じ考えです。子供が改善するためには、手段を選んではいられません。とにかく早く改善させるために最善を尽くすことが最優先ですね。

篠浦: 「病気がよくなるためであれば、あらゆる方法を使う」という発想の原点は、米国に留学した30代半ばの経験にあります。それまでは、脳外科医として手術ばかりしてきたので、できるだけ数多く手術をして上達したいといった発想が当たり前だと思っていました。ところが、研究者として米国に留学し、脳外科から一時的に離れてみると、どんどん手術をすることが本当に人にためになっているのか、本心では患者さんは手術を受けたくないのではないかという気持ちが芽生えはじめたのです。
 その時から、手術がどうしても必要な時には最高の技術をもってするが、極力手術をしないで患者さんを治すやり方がいいのではないかという気持ちに、少しずつ変わっていきました。

篠浦脳活用度診断でストレス克服をして幸せに!

篠浦: 私は2000年から、いま在籍している都立駒込病院に勤務しています。誤解をおそれずにいうと、その当時の駒込病院の脳外科は、どうみても二流といってもいいレベルでした。そこで、この情けない現状をなんとかしなければと考えて導入したのが、覚醒下手術です。「これで脳外科医としての誇りを取り戻せる。患者さんに本当の意味で役に立つ技術だ」と、ようやく確信が持てたことを今でも思い出します。
未だにほとんど行われていない最先端技術である覚醒下手術を、現在のように技術的に確立するに至るには幾多の困難がありましたが、今では日本全国から、覚醒下手術を受けたいという患者さんが来られるまでになりました。

鈴木: まさに篠浦先生は脳外科手術の分野でパイオニア的な役割を果たされてきたのですね。

篠浦: 覚醒下手術は最先端の西洋医療ですが、患者さんの自然治癒力を引き出す側面もあったのです。さらに、覚醒下手術を通して脳の機能局在がはっきりとわかってきたのです。

鈴木: それは素晴らしい!私が最も関心のある分野です!

篠浦: 私は、覚醒下手術で直接確認した脳機能と脳科学の知見を総合して、脳の使い方がわかるテスト(注:篠浦脳活用度診断(S-BRAIN))を作りました。そして、生活習慣病の改善や予防のためにカウンセリング等でこれを使っており、実際成果を上げています。
なぜなら、生活習慣病の背後には、脳の使い方がうまくいっておらず、そのためストレスに負けていることが考えられるからです。各人が自分の脳の使い方を理解することで、ストレスが軽減し、幸せに生きることにつながることを期待しています。

鈴木: そのテストは私も是非受けてみたいです。またエジソン・アインシュタインメソッドを実践している親御さんにもお勧めできるかもしれません。というのは発達障がい児の改善というのはまさに毎日が挑戦だからです。親御さんが日々のストレスとうまく付き合う方法を見つけられれば、その分、子供の改善は間違いなく加速します!

エジソン・アインシュタインメソッドの真髄はお母さんの愛情!
愛情が子供の安定に繋がる

鈴木: ところで先生はすでに私の著書を数冊お読みくださったそうですが、どのようなご感想を持たれましたか?

篠浦: 鈴木先生の著書を読みまして、発達障がい児の脳の扁桃体が非常に活性化していることが発達障がいの本質だと改めて思いました。ですから逆に、もの凄く能力が上がる部分もあるのです。
エジソン・アインシュタインメソッドの中心はお母さんの愛情。お母さんの愛情によって脳の扁桃体が安定してくる。それによって改善が起こる。そういうことだと思います。
発達障がいに対して、医学界は、今は「診断をつければいい」というムードなんですが、私はそれは間違っていると思っています。

鈴木: 扁桃体を安定させるにはどんな方法がありますか?

篠浦: 最初はやはり鈴木先生が教えている方法…愛情をベースにやっていくのがベストです。

幸せホルモンによって脳神経は発達する
「厳父慈母」の教育から「慈母厳父」の教育へ

篠浦: 子どもにまず必要なのは「愛情」です。それによって子供の状態がある程度安定したら、そこから必要なのは厳しさです。母親的な優しさと父親的な厳しさの両面が必要です。そうすれば自律神経が高いレベルで安定し、機能することができます。

鈴木: 日本の教育に「厳父慈母」(厳格な父親と優しい母親のこと。両親の理想像をいう)という言葉がありますね。私は、これは順番が逆で「慈母厳父」が本当だと思うんです。つまり、6歳までの基礎が出来るまではお母さんの慈しみで育てて、基礎が出来たら今度はお父さんの厳しさで育てる。そうでないと社会では生きていけない。逆をやると潰れちゃう。

篠浦: 仰る通りだと思います。神経はオキシトシンというホルモンが出ないと発達しないんです。それはやはり母親の愛情ですよね。大人物というのは裕福な家庭に生まれて、少年時代にその家が没落して苦労しています。松下幸之助もそうだし家康もそうだし…。子どもの脳は、愛情を持って育てられた後に、厳しい躾を受けることで強くなるんです。

家庭教育のレベルアップは21世紀への公共投資
正しい情報が世の中を変える!その臨界点をめざして

鈴木: 私は以前より「家庭教育をもう一度考え直さないと、人類は崩壊し滅亡してしまう」と危機感を抱いています。「三つ子の魂百までも」と言われる3歳までは、お母さんや保護者の方がしっかりと関わるべきだと思っています。

篠浦: 最大の問題だと思います。今の社会に本質的に問題がありますね。共働きで子どもといる時間が短い…。

鈴木: 結果として未来を潰している。

篠浦: 一番大事なところです。子供にとって母親と一緒にいることが大事なのは、歴史的に証明されていますし、脳科学でもハッキリ実証されています。脳を分かっていないのですよ。

鈴木: 家庭教育のレベルを上げることが、21世紀の公共投資だと思っているんです。もっと子どもの未来に投資をするべきではないかと…。日本の状況を見ていると、日本の家庭教育も崩壊に向かいそうですし、教育に対する目先主義も問題だと言われています。どうしたら良いのでしょうか?

篠浦: 最私は、今のリーダーたちに全く期待していないです。だから僕は一般の人の流れを作ろうと思って「篠浦塾」を作りました。
一般の人たちが正しい情報を得て病院を選べばいいわけですよ。みんなが行かなければ、悪い病院や悪い医者は全部消えていきますから。これからは権威主義が落ちてゆく時代です。悪い金儲け主義は潰れていきます。

鈴木: 私も、意識の高い保護者の方々を探して、家庭教育を普及していきたいと思っています。

篠浦: 私も正しい情報を伝えられる仲間を作っています。伝える人をどんどん増やしていけば、ある時点で臨界点へ達する。そうすればあとは一気に広がる。僕はそれしかないと思っています、世の中を良くするには、上からでは絶対に無理ですよ。

発達障がいは薬では絶対に治らない
発達検査表と家庭教育が世界を救う!

鈴木: 発達障がい改善に於いては、6歳までの基礎能力が特に大切になります。年齢ごとの基礎能力の到達度をデータ化し客観的に見られる、発達検査表というものを作りました。基礎能力の全576項目をチェックして、〇と△をつけます。×ではなく△です。次に△を〇に伸ばしていく取り組みをします。この時、お母さんが△の中でも、取り組みやすいものから始めます。取り組みは必ず笑顔でしてもらいます。最終的には〇の数を6歳までの基礎能力の90%まで増やすことを目標にしています。しかも、これはすべての子どもに対応できる家庭教育です。世界中に家庭教育の変革・パラダイムシフトを起こせるんじゃないかと思っています。

篠浦: なるほど。凄いですね。よく作られましたね。

鈴木: 今は「障がい児は治らないんだから施設に入れろ」という風潮がありますよね。そして支援学校に入れて、不安定だと薬を飲ませる。どうですか?先生、それでは脳が破壊されてしまいますよね。

篠浦: 発達障がいは、薬では絶対に治りません。「脳の状態」は薬では治らないのです。

鈴木: 私たちは発達障がいを障がいとは捉えずに「特性」と考えています。その特性を伸ばして、社会で活躍できる人を育てたいと思っています。こういった子どもたちがどんどん活躍することで一般社会が転換していく…。彼らの才能が未来社会を支える。この子たちをちゃんと評価して、支えてもらえるような社会的なシステムを作っていきたんです。そのためにもまずは家庭から。そんなユニバーサルデザインの家庭教育を今後、展開していきたいと思っています。

篠浦: 鈴木先生は、家庭教育で教育立国ですね。私は、日本は医療立国を目指すべきではないかと思っています。他国で治せない病気を日本で治す。発達障がいを日本で治せる。だったら日本にはどこも攻めてこないですよ。世界平和に一番貢献するのは日本ということになります!

鈴木: それはすごい。篠浦先生とタッグを組んで社会を変えたいですね。ご協力をお願いします!

篠浦: こちらこそよろしくお願いします。本当にすごいと思いますよ。これは日本にとって一番大事なことです。私も勉強させてもらい、ご協力させて頂きますよ!

鈴木: ありがとうございます。よろしくお願いします。

対談者プロフィール

篠浦伸禎  都立駒込病院 脳神経外科部長

篠浦伸禎 (しのうら のぶさだ) 都立駒込病院 脳神経外科部長

1958年生まれ。東京大学医学部卒業後、富士脳障がい研究所、東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院、都立荏原病院、国立国際医療センターにて脳神経外科医師として勤務。
1992年、東京大学医学部の医学博士を取得。同年、シンシナティ大学分子生物学部に留学。帰国後、国立国際医療センターなどで脳神経外科医として勤務。
2000年より都立駒込病院脳神経外科医長として活躍し、2009年より同病院脳神経外科部長となる。脳の覚醒下手術ではトップクラスの実績を誇る。
2015年12月12日週刊現代「人として信頼できるがんの名医100人」に脳領域で唯一選ばれるなど日本を代表する脳外科医師。
2016年4月より「篠浦塾」を設立し、塾長として「本当に良い医療情報を発信しよう」という志のもと、講演・セミナーなど様々な活動を展開している。
著書「現場から始まる医療革命 統合医療の真実」「脳にいい5つの習慣」「どんどん脳を使う左脳・右脳×2次元・3次元 4領域を鍛えあげて 明日の仕事を変える方法」「戦争好きな左脳アメリカ人、平和好きな右脳日本人」「臨床脳外科医が語る 人生に勝つ脳」など多数。

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